江戸初期の儒学者・中江藤樹(一六○八~一六四八)は、さまざまな徳行・感化によって〝近江聖人〟と称えられた人物です。藤樹は日常の中で心がけるべきこととして、「五事(貌・言・視・聴・思)を正す」ということの大切さを説きました。
これは、和やかな顔つきをし(貌)、思いやりのある言葉で話しかけ(言)、澄んだ目で物事を見つめ(視)、耳を傾けて人の話を聴き(聴)、真心を込めて相手のことを思う(思)ということです。こうすることによって、周囲と親しみ、尊敬し、認め合う心を磨くことができるというのです。
私たちは、互いに支え合って生きています。よりよい人間関係を築くには、自分の思いばかりにとらわれず、みずからを律したうえで、どのように周囲の人々に尽くし、協力していけるかを考えることが大切なのではないでしょうか。
『ニューモラル』504号,『366日』10月21日