道徳の授業:正直・誠実

分類:A2 A3 B4

「信じる」ということ

 智子さんが子どもたちと楽しく給食を食べていると、突然、「キャー。きたない」という声が聞こえました。

 一人の女の子が気分が悪くなって吐いてしまったのでした。

 その子は今にも泣き出しそうです。

 『臭いょ!」「やだね!」と、子どもたちは大騒ぎ。

 “困ったな。…”

 智子さんは、とにかく子どもたちを落ち着かせようと、「先生がかたづけるから、だいじようぶよ」と言葉をかけました。

 保健係の子に、その子を保健室に連れて行くように頼んで、智子さんは一人で床を拭きはじめました。

 ふと気がつくと、智子さんの横で床を拭きはじめた子がいました。

 「孝くん」“あの孝くんが、手伝ってくれるなんて…”

 智子さんは、しばらく孝くんの姿に見入ってしまいました。

 「ありがとう、孝くん!先生、助かっちゃった」

 智子さんがそう言葉をかけると、孝くんは智子さんに向かってニッコリほほえんで、「臭いのなんか、あたりまえだよ。だれだって、気持ちの悪いときはあるだろう」と、周りの子どもたちに言ったかと思うと、また黙々と床を拭き続けました。

 智子さんは嬉しくなって職員室に行って斉藤先生に報告しました。

 「まあ、智子先生。それはすごい発見をしたわね。前に、“信じることが愛だ”って言ったでしょう。愛には、相手に行動を起こさせる力もあるのよ。あなたが信じてあげることによって、子どもの可能性は、無限に広がるのよ」

 「斉藤先生、もしかすると“信じる”って、生きるエネルギーを与えてくれる“太陽”みたいなものかもしれないですね……。私なんだかワクワクしてきました」。

 人は、だれかに信じられていると安心してのびのび成長できるのではないでしょうか。

『ニューモラル』333号

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