「満腹ネズミ」の話をご存じでしょうか。食事と寿命の関係を東京都老人総合研究所が実験調査した結果、毎日腹八分目に食べたネズミは千二百二十二日生き、常に満腹なネズミはその半分の六百八十日しか生きなかったそうです。満腹ネズミが短命になった理由の一つに、満腹を脳に知らせる「満腹中枢」の機能不全があるといわれます。通常、満腹中枢が機能し始めるのは食べ始めてから二十分後であるのに、それより早く食べ物を胃に詰め込むことで、体が正常な満腹値を判断できなくなるのです。
同様に、より早く、より簡単に結果や成果を求め続ける生活の中では、満足や喜びなどを感じる心が麻痺して、いくら欲を満たしても、喜びや幸せを感じられない状態になるのではないでしょうか。〝満心〟を求めず、腹八分目の段階で、今ある状態を肯定し、満足を得る。それが、心の健康を保つ秘訣かもしれません。
『ニューモラル』476号,『366日』10月9日