ある平日の朝。会社員の昌史さん(29歳)は、手首を痛めている奥さんを気づかって、夫婦二人分の朝食を準備することにしました。一人暮らしの経験もある昌史さんは、簡単な料理はお手の物。“気づかれないうちに手づくりの朝食を並べておいて、驚かせてやろう”とも思ったのです。ところが、食事を終えるころには出勤の時間が迫っています。結局、食器の片付けは奥さんに頼むことになってしまったのでした。
人のためによかれと思ってすることも、“こうすれば相手は喜ぶはず”という思い込みや“相手によく思われたい”という自分本位の考えで推し進めるのでは、よい結果につながらないことが多いものです。相手の立場を心から思い、どうするのがいちばんよいかという想像力を広く深くはたらかせたとき、はじめて本当の「思いやりに満ちた行為」となり、相手も自分も喜びを感じるのではないでしょうか。
『ニューモラル』512号,『366日』7月22日