田植えの季節に、余った苗が捨てられているのを村のあちこちで見つけた少年・二宮金次郎(尊徳、1787~1856)は、それらを一つ一つ拾い集めると、荒れた空き地を耕して植えました。そうして丹念に育てていくと、秋には一俵ものお米を収穫できたということです。
金次郎は、どんな物や人にも〝よさ〟や〝とりえ〟があると考え、これを“徳”と名づけました。取るに足らない小さなものでも、その“徳”を生かす方向へ努力を積み重ねていくと、必ずや大きな実りを得ることができる――。こうした実感から「積小為大」の法則をつかんだ金次郎は、人心も田畑も荒廃した村をめぐり、勤労と倹約によって得た財で生活に困っている人々を援助し、これを後世にも受け継いでいくことを説きました。そして、生涯に六百もの農村を復興させたのです。
『ニューモラル』515号,『366日』11月16日