仏教では、すべての物事は、直接的な原因である「因」と間接的な条件である「縁」によって成り立っていると考えます。
例えば花が咲くということは、種という因と、水・光・空気などの縁があって、はじめて可能になります。最初に因があり、そこに縁がはたらいて結果が出ます。そして、その結果がまた新たな因となり、新たな縁が加わって次の結果が生まれるのです。
人と人とのめぐり会いも、因と縁によってもたらされた結果です。それをつなぐ糸は目には見えませんが、私たちが親から受けた深い愛情も、因と縁によって運ばれてきたものです。ですから、もし親が亡くなっていたとしても、親から与えられた恩恵を新たな縁に乗せて次世代や周囲の人に運び、自分自身が「他の人から喜ばれる人間」になれば、それは立派な親孝行(恩返し)になるのではないでしょうか。
『ニューモラル』474号,『366日』9月7日