昔、中国の北方の砦(塞)の近くで、一人の老人が息子と一緒に暮らしていました。
あるとき、老人の飼っていた馬が逃げたので、周りの人たちは気の毒がりましたが、老人は泰然と構えていました。しばらくすると、逃げた馬が立派な馬を連れて帰ってきました。ところが周囲から「よかったですね」と言われても、老人はたいして喜ぶ様子もありません。さらにはある日、老人の息子がその馬から落ちてけがをします。周囲は気の毒がりますが、老人はやはり平然としていました。
その後戦争が起こり、戦場に出た村の若者たちは、ほとんどが戦死してしまいました。しかし、老人の息子はけがで兵役に就けなかったため、生き長らえたのです。
人間万事塞翁が馬です。一時の幸せや一時の不幸に一喜一憂することなく、その状況を心穏やかに受けとめ、揺るぎない歩みを続けていきたいものです。
『ニューモラル』517号,『366日』8月21日