分類:B1
「惻隠の心は仁の端なり」という言葉があります。人の苦境を見て惻み隠む心、助けたいと思う心は、仁愛の心、慈愛の心の糸口であるという孟子の言葉です。
よちよち歩きの子供が川に落ちそうになっているのを見れば、われを忘れて駆け寄り、助けようとするものでしょう。そのときの心は、お礼を言われたいとか、助けないと非難されるから、というものではありません。まさに見返りを求めない心であり、慈愛の表れといってよいものです。私たちは、誰もがこの慈愛の心を宿しています。
しかし現実には、人に優しく、親切にするよりも、自分にとって損か得かを考えて行動したり、人を不公平に扱ったりすることが多いのではないでしょうか。
このように人の心には、よくも悪くもはたらくという二面性があります。だからこそ日々優しさを発揮し、慈愛の心を大きく育てていく必要があるのです。
『ニューモラル』420号,『366日』5月23日