鎌倉時代初期の禅僧・道元(1200~1253)の『修証義』の中に、「利佗(りた)を先とせば自らが利省(はぶ)かれぬべしと、爾(しか)には非(あら)ざるなり。利行(りぎょう)は一法(いっぽう)なり、普(あまね)く自佗(じた)を利するなり」とあります。
私たちは、他人の利益を優先させれば、自分の利益が減ってしまうというように考えがちです。しかし、そもそも「他人のため」と「自分のため」を分けて考えること自体に誤りがあるのではないでしょうか。人々に利益を与える行為は、それを行う本人にとっても「利行」です。自分と他人をも共に利するのです。
どんな仕事にも、それによって助かる人や喜んでくれる人が、必ず存在するでしょう。人の役に立っていると実感できれば、自分自身の喜びが生まれます。日々の仕事を、まず「人に喜ばれるように」という視点でとらえ直してみませんか。
『ニューモラル』426号,『366日』5月28日