教育哲学者・森信三氏(1896~1992)に師事した寺田一清さんは、あるとき師から「あなたは脱いだ履物のそろえ方も知らんのか」という注意を受けたと言います。寺田さん自身はきちんとそろえているつもりだったそうですが、師の真意は「後から来る人のために、位置に気をつけて並べているかどうか」にあったということです(参考=『人は終生の師をもつべし』モラロジー研究所)。
「思いやりの心」とは、「直接ふれあう人に向けて発揮すること」だけに意味があるのではありません。日々、一つの思いにも一つの行いにも「思いやりの心」をはたらかせて生活すること――。そこには、周囲の人々との間に円満な人間関係を築くとともに、自分自身の心を成長させて、人生を明るい方向へと導いていく、無限の力が潜んでいます。
『ニューモラル』500号,『366日』12月20日