「碎啄」という言葉があります。卵の中で、今まさに生まれ出ようとするヒナは、内側から殻をつつきます。そのヒナの動きを感じた親鳥が、外からも殻をつついてこれを助けようとします。その内と外からつつくタイミングがうまく一致すると、殻が割れてヒナが無事に誕生するのです。それは、まさに「逃したらまたと得がたい絶好の機会」といえます。
私たちは毎日のようにさまざまな出会いを経験するものですが、人と人との出会いもまた、ただ相手と向かい合ったというだけでは「出会い」とはいえないのではないでしょうか。こちら側の心に「相手を受け入れる準備」が整っているだけでなく、それが相手の側のタイミングともうまく合致したときにこそ、人生を変えるほどの出会いも生まれるものだといえるでしょう。
『ニューモラル』371号,『366日』3月30日