昔、イギリスのウィンザー公が、ある晩餐会に出席したときのことです。
参加者の一人がマナーを知らず、指先を洗うフィンガー・ボールの水を飲んでしまいました。
それを見た周囲の人は戸惑いましたが、ウインザー公は少しもあわてず、同じようにフィンガー・ボールの水を飲み、その人に恥をかかせないようにしたのです。
これは形式にとらわれず、マナーというものの精神をよく理解していた一例です。
作法をいくら知っていても、相手の立場に立つゆとりがなければ、時には押しつけとなり、ありがた迷惑と受け取られかねません。
また、相手を思いやるにしても、それをうまく表現する知識や技術がないと善意は伝わりません。
心と技術が伴ってこそ、相手に喜ばれる思いやりとなるのです。