江戸時代、最盛期には人口百万人を超えた江戸の町で、人間関係を円滑に、暮らしを心地よいものにするために生み出された「江戸しぐさ」というものがあります。
雨の日にすれ違う際、しずくが相手にかからないようにする「傘かしげ」、後から乗ってきた舟客のため、腰を浮かせて空席をつくる「こぶし腰浮かせ」など……。江戸しぐさの伝承に取り組む越川禮子さんは「その根底には『人はみな仏や先祖に見守られて生きている。だから、お互いに教え合い、助け合い、いたわり合うのが当然』という考えがあった。この“他を思いやる心”が現代に足らないのではないか」(参考=『れいろう』平成19年9月号)と語っています。
今、慌しい日々の中で、周囲に思いをめぐらす「心のゆとり」が失われていくのは寂しいことです。先人の「ほんの少しの心配り」に学んでみませんか。
『ニューモラル』476号,『366日』3月6日