日本は古くは「瑞穂の国」とも呼ばれるように、稲作を中心とする生活を送ってきました。みずみずしい稲穂がたわわに実っている風景を、国の理想としたのです。
現代の「勤労感謝の日」は、その名残といえるでしょう。これは「勤労をたっとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう」という趣旨で、昭和二十三年に定められた国民の祝日ですが、それ以前は「新嘗祭」と呼ばれる祭日でした。
新嘗祭は、現在も行われています。天皇陛下がその年に収穫した新穀を神々に供えて農作物の恵みに感謝し、みずからも食するという儀式です。これは、国民にとっても大切なお祭りでした。お米の一粒一粒が太陽と水と土の恵みであることを知っていた昔の人々は、秋の収穫を喜び、神々に感謝してきたのです。今日は自然の恩恵に対する感謝の気持ちを込めて、心から「いただきます」を言ってみませんか。
『ニューモラル』411号,『366日』11月23日